2025/06/23 22:27

こんにちは、わたなべ木工芸の渡辺です。

今回は、「どうしてそんなに安くできるんですか?」とよく聞かれる木軸ペンの価格について、
僕なりの考えをお話ししたいと思います。

「安く売ろう」と思っているわけではありません

まず最初にお伝えしておきたいのは、
僕自身は「安く売っている」というよりも、“できるだけお買い得にしたい”と思って価格を決めているということです。

自分では「かなり頑張って安く出している」と思っていますし、
木の質で考えたら、かなりお得なものをお届けできているという自負があります。

でも、それには理由があります。
そしてそこには、僕の中にある「ある想い」も関係しています。

僕が「安くていい木」を出せる理由

僕の工房「わたなべ木工芸」は、もともと伝統工芸の木地師の仕事をしていた工房です。

かつては、職人を何人も雇って漆器などを大量に生産していた時代もありました。
その頃は、丸太で木を大量に仕入れて、数年単位で自然乾燥させながら、
未来の仕事に向けて木材をストックしていたんです。

でも、時代の流れとともに、そうした仕事は徐々に減っていき、
祖父や父が使いきれなかった木材が、今も工房にたくさん残されています。

僕が今作っている木軸ペンは、そうしたストック材の中から、
本当に質の良いものだけを選び抜いて使っているんです。

特に「ケヤキ」「神代ケヤキ」「トチ」は在庫に強みがあります。

「トチ」は、**縮み杢(ちぢみもく)**が出ているものしか使いません。
これはストック全体の中でも数%しかない、非常に希少なものです。

ケヤキは、木目の細かいものや杢が出ているものを中心に使っていて、
特に優れたものだけは「極上」として別枠で出させていただいています。


神代ケヤキは、木目の細かさと色味を重視しています。
落ち着いた雰囲気と高級感のある佇まいが魅力です。


その他の木材も、それぞれに選別の基準があり、
詳しく話すと長くなるので、ここでは割愛しますね。

「木地師」という言葉を届けたくて

僕がこの価格設定にしている理由のひとつに、
“木地師”という言葉を広めたいという想いがあります。

木地師(きじし)というのは、木を削って漆器の「木地(きじ)」を作る職人のこと。

僕の祖父や父もそうでしたし、僕自身も今、その技術の延長線上で木軸ペンを作っています。

ですが、この木地師という仕事も、いま全国的に担い手が減っていて、
伝統工芸としてはもう終わりに近づいているのが現状です。

だからこそ、“木地師が作る木軸ペン”というキャッチコピーで、
この仕事の存在や魅力を、今の時代にあった形で伝えたいと思っているんです。

そのためには、若い人にも「いいな」と思ってもらえるような、
手に取りやすい価格で届ける必要があると考えています。

ただ、他の作家さんやメーカーさんと比べても、
「価格のわりにすごく良い木を使ってますね」と言っていただけることが多く、
そこは自分でもちょっと誇りに思っています。

最後に

適正価格よりも少しお得に。
でも、妥協のない素材選びと技術で、しっかり作る。

そんな思いで、日々ペンづくりに向き合っています。

このブログを読んで「へえ、そんな背景があるんだな」と思っていただけたら、
それだけでも、すごく嬉しいです。

これからも、わたなべ木工芸の木軸ペンをどうぞよろしくお願いします。
ではまたー