わたなべ木工芸の木軸ペン『Penman』とは|伝統工芸の技術と想いを受け継ぐ一本
わたなべ木工芸は、富山県南砺市にある小さな工房です。
1950年に創業し、もともとは漆器の木地(きじ)を専門に作っていました。
木地とは、漆を塗る前の“素地”となる木の器やお椀のことで、木をろくろで削って形づくる「庄川挽物木地(しょうがわひきものきじ)」という伝統技術が使われています。
この地域で長く受け継がれてきた木工技術を、今も工房の中で大切に守り続けています。
今ではすっかり少なくなってしまったこの技術を、なんとか未来に残したい。
そんな想いから、伝統の技を活かしながら、“木軸ペン”という新しいかたちのものづくりに取り組むようになりました。
ペンづくりそのものは伝統工芸ではありませんが、木の知識や技術は、今のものづくりにも活かされています。
木軸ペンを作り始めた理由
工房には、長年集めてきた木の“端材(はざい)”がたくさんありました。
器づくりの工程で出た、サイズの小さな木材たち。
どれも木目が美しく、目が詰まっていて、見ればすぐに“いい木”だとわかる、最高品質の材でした。
普通なら処分されてしまうような小さなかけら。
でも、それを見ているうちに「これをただ捨ててしまうのは、どうしてももったいない」と思うようになりました。
それらの木材は、祖父や父──いずれも伝統工芸士だったふたりが選んだ、大切な材料たちです。
何十年も乾かして保管されてきた木には、それぞれに時間と想いが詰まっていて、
ただの“端材”という言葉では片づけられない存在感がありました。
その背景ごと、次の世代に、日常の中で届けられるようなかたちにできないだろうか──
そう考えたときにたどり着いたのが、若い世代にも親しみのある“文房具”=ペンというかたちでした。
木という素材の魅力を、日常の中で自然に感じてもらえるように。
こうして、わたなべ木工芸の木軸ペンづくりが始まりました。
わたなべ木工芸のこだわり
木はすべて、自分の目で見て選んでいます。
木軸ペンに使う木材は、小さな道具としての美しさや強さを引き出すために、木目が細かく、密度の高い“質の良い部分”だけを厳選しています。
大きな器とは違い、ペンは限られたサイズの中に魅力を詰め込む必要があるため、小さな材だからこそ、目利きが大切になります。
そのうえで、特に“杢(もく)”と呼ばれる表情豊かな木目には強いこだわりがあります。
同じ種類の木でも、一本一本まったく違う表情を見せてくれるのが木の面白さです。
希少材や個性的な木目を見つけたときは、「この木がどんなペンになるか」を想像しながら木取り(材料を切り出すこと)を行います。
木のクセや性質を見極めて、最も美しく見えるように仕上げる──これは長年木と向き合ってきた経験があってこそできることです。
また、黒柿や神代けやきなどの希少材だけでなく、欅(けやき)や桑(くわ)など、国産の木材にも積極的に取り組んでいます。
木軸ペンを通じて、日本の木の良さをもっと多くの人に知ってもらいたい──そんな想いも、私たちのものづくりの原動力になっています。
ペンの魅力をもっと知りたい方へ
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
「木のペンっていいかも」と思ってくださった方に向けて、
木軸ペンにまつわる詳しい記事をご紹介します。
「どんな木があるの?」「お手入れはどうすれば?」という疑問にもお応えできる内容ですので、気になるテーマがあればぜひご覧ください。
おわりに|使い捨てじゃない、特別な一本を
木のペンは、毎日使うたびに少しずつ艶が増し、色合いが深まっていきます。
どれひとつ同じものはなく、手に取るたびに木の個性やぬくもりが感じられる──そんな道具です。
わたなべ木工芸では、一本の木が“最後まで活かされる形”として、木軸ペンという答えにたどりつきました。
古くから受け継がれてきた木工の技術をベースにしながら、今の暮らしに自然と馴染むものを届けたい。
そんな気持ちで、一本ずつ心を込めてつくっています。
使い捨てではなく、“手に馴染ませながら育てていく道具”。
日々の暮らしの中で、木という素材の美しさや、日本のものづくりのあたたかさを感じていただけたら嬉しいです。