2026/09/07 17:12
木軸ペンに使われる木材には、欅や山桜のような国産材から、黒檀や紫檀といった海外の銘木まで、さまざまな種類があります。
では、どのような木材が木軸ペンに向いているのでしょうか。
こんにちは。わたなべ木工芸の渡辺です。
創業76年の伝統工芸の工房で、木軸ペンを作っています。
早速、結論ですが、私が木軸ペンに使う木材を選ぶときは、
主に次の5つの条件を大切にしています。
・ある程度の硬さがある
・きちんと乾燥した木材である
・色や木目に個性がある
・手触りや経年変化を楽しめる
・木材の背景にストーリーがある
ただ珍しい木材や高価な木材であれば、良い木軸ペンになるとは限りません。
毎日使う道具としての丈夫さはもちろん、手にしたときの心地よさや、長く使いたくなる魅力も必要です。
この記事では、これまでさまざまな木材を削ってきた職人の立場から、
木軸ペンに向いている木材の5つの条件を詳しく解説します。
条件①|ある程度の硬さがある

木軸ペンは、飾って眺めるだけのものではなく、毎日手に取って使う道具です。
そのため、長く使うには木材にある程度の硬さが必要です。
柔らかすぎる木材は、爪や周囲の物が当たっただけでも傷やへこみが付きやすく、
きれいに磨いても表面の状態を保ちにくいことがあります。
硬い木材は、表面を丁寧に磨くことで滑らかになり、美しい艶が現れます。
さらに、日々使い込むことで艶が増し、木目や色合いがよりきれいに見えるようになります。
わたなべ木工芸で使用している木材では、紫檀・黒檀・鉄刀木が特に硬い木材です。
丈夫で傷が付きにくく、使いながら艶が増していく様子を楽しめるため、長く愛用する木軸ペンに向いています。
条件②|きちんと乾燥した木材である

木軸ペンに使う木材は、硬さや木目だけでなく、きちんと乾燥していることも大切です。
伐採されたばかりの木には多くの水分が含まれています。
乾燥が不十分な状態でペンに加工すると、完成後に水分が抜けることで木が縮み、
反りや割れが起こりやすくなります。
木軸ペンは細く、木材と金具を組み合わせて作るため、わずかな変形でも見た目や使い心地に影響することがあります。
わたなべ木工芸では、木材を数年、長いものでは数十年単位で自然乾燥させてから使用しています。
すぐに加工するのではなく、時間をかけて乾燥させ、木材の状態を見ながら使える時期を待ちます。
木材は乾燥させればまったく動かなくなるわけではなく、完成後も周囲の湿度によって少しずつ変化します。それでも、加工前にしっかり乾燥させることで、大きな反りや割れが起こる可能性を抑えられます。
どれほど珍しく美しい木材でも、乾燥が不十分であれば、木軸ペンの材料としてすぐに使うことはできません。長く安心して使える一本を作るためには、木材を待つ時間も大切だと考えています。
条件③|色や木目に個性がある

木軸ペンの魅力を大きく左右するのが、木材の色と木目です。
木軸ペンは家具などと比べると、木材が見える面積は小さくなります。
そのため、細い軸の中にも、その木らしい色や木目が現れる材料が向いています。
たとえば、欅には力強くはっきりとした木目があり、神代欅には長い年月を経て生まれた渋い色合いがあります。黄檗やケンポナシには縮み杢が現れるものがあり、光の当たり方や見る角度によって表情が変わります。
ただし、木材の表面を見ただけでは、完成後の木目を正確に予想できません。同じ一本の木から切り出した材料でも、場所や木目の向きによって仕上がりは異なります。
私も木軸ペンを作るときは、最後にオイルを塗る瞬間を楽しみにしています。削っているときには分かりにくかった色や木目が、オイルを塗ることではっきりと浮かび上がるからです。
一本ずつ異なる表情を持ち、完成するまで仕上がりが分からないことも、天然木を使って木軸ペンを作る面白さだと思います。
条件④|手触りや経年変化を楽しめる

木軸ペンは、見た目だけでなく、手に触れたときの感触も大切です。
木材には、金属や樹脂とは異なる自然な温かさがあります。表面を丁寧に磨くことで滑らかな手触りになり、毎日使う筆記具として手に馴染んでいきます。
使い続けるうちに、手で触れることや光の影響によって、木の色や艶も少しずつ変化します。欅や山桜のように色が深くなる木材もあれば、鉄刀木のように明るい部分が周囲の濃い色へ馴染んでいく木材もあります。
ただし、経年変化の現れ方や早さは樹種によって異なります。神代欅のように、購入したときの落ち着いた色合いから大きく変化しにくい木材もあります。
大きく色が変わる木材にも、もとの色を長く楽しめる木材にも、それぞれ違った良さがあります。使う人の手や年月によって、その人だけの一本へ変化していくことも、木軸ペンに木材を使う魅力です。
条件⑤|木材の背景にストーリーがある

木軸ペンに使えるかどうかは、硬さや乾燥状態によって決まります。
しかし、選ばれる特別な一本になるには、
その木材が持つ背景やストーリーも大切だと考えています。
たとえば、欅は丈夫で美しい木目を持つことから、日本では古くから建築や家具、工芸品などに使われてきました。
黒檀・紫檀・鉄刀木は「唐木三大銘木」と呼ばれ、
高級家具や工芸品の材料として大切にされてきた木材です。
神代欅は、火山活動や土砂崩れなどによって地中に埋まり、長い年月を過ごした欅です。
地中の成分の影響を受けた独特の色合いには、その木が過ごしてきた時間が表れています。
以前製作した赤いケンポナシも、古い家の屋根裏から見つかり、譲っていただいた材料でした。材木屋さんから「一生に一度出会えるかどうか」といわれたほど珍しい木材で、材料との出会いそのものにも物語があります。
わたなべ木工芸では、日本の生活や伝統工芸に縁のある木材を中心に、木軸ペンを作っています。それは、木軸ペンを通して、日本の伝統工芸を少しでも身近に感じてほしいと思っているからです。
木材の名前だけでなく、どこで育ち、どのように使われてきたのかを知ることで、その一本への見方や愛着も変わります。
昔から受け継がれてきた木材を、現代の生活で使える木軸ペンとして残していく。そのペンが日本の伝統工芸を知るきっかけになれば、うれしく思います。
木軸ペンに向いている木材についてのよくある質問
<硬い木ほど木軸ペンに向いていますか?>
木軸ペンにはある程度の硬さが必要ですが、硬ければ硬いほど向いているとは限りません。
柔らかすぎる木材は傷やへこみが付きやすく、反対に極端に硬い木材は加工が難しくなります。日常使いに耐えられる硬さと、細い形まできれいに削れる加工のしやすさ、その両方が大切です。
また、硬い木材は密度が高く、完成したペンも重くなる傾向があります。重厚感や安定感を求める方には向いていますが、軽いペンを探している方には、木軸ペンに必要な強度を持つ範囲で、少し柔らかく軽い木材も選択肢になります。
木軸ペンに適した硬さは一つではありません。好みの重さや使い心地に合わせて樹種を選ぶことも大切です。
<乾燥が不十分な木材を使うとどうなりますか?>
乾燥が不十分な木材を加工すると、完成後に水分が抜けて木が縮み、反りや割れが起こりやすくなります。
木軸ペンは木材と金具を組み合わせて作るため、わずかな変形でも見た目や使い心地に影響することがあります。そのため、木材を十分に乾燥させてから加工する必要があります。
<同じ樹種なら、色や木目も同じですか?>
同じ樹種であっても、色や木目は一本ずつ異なります。
育った環境や木の個体差、幹のどの部分から切り出したかによって、色の濃さや木目の細かさ、杢の現れ方が変わります。同じ木から切り出した材料でも、まったく同じ表情になることはありません。
それぞれの違いを個性として楽しめることも、天然木で作る木軸ペンの魅力です。
まとめ|木軸ペンに向いている木材とは
木軸ペンに向いている木材には、次の5つの条件があります。
・ ある程度の硬さがある
・きちんと乾燥した木材である
・色や木目に個性がある
・手触りや経年変化を楽しめる
・木材の背景にストーリーがある
木軸ペンは、珍しい木や高価な木を使えば良いものになるわけではありません。毎日使える丈夫さと、手にしたときの心地よさ、長く使いたくなる魅力がそろっていることが大切です。
わたなべ木工芸では、数年、長いものでは数十年単位で自然乾燥させた木材を使用しています。
また、日本の生活や伝統工芸に縁のある木材を中心に選んでいます。
また、日本の生活や伝統工芸に縁のある木材を中心に選んでいます。
木軸ペンを通して、木の色や木目を楽しむだけでなく、その背景にある日本の暮らしや伝統工芸も身近に感じていただければうれしく思います。
実際にPenman JPで使用している木材については、「Penman JPの樹種一覧|木材ごとの特徴とおすすめの選び方を職人が解説」で詳しくご紹介しています。
樹種選びに迷っている方は、ぜひあわせてご覧ください。
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気になる方は、ぜひこちらからご覧ください。
