2025/09/11 16:04

最終更新日:2026年10月8日

「漆塗り」っていう言葉は聞いたことがあっても、実際にどんなものなのか詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。

漆塗りは、日本で古くから受け継がれてきた伝統的な塗装技法で、
木の表面を美しく、そして丈夫に仕上げることができます。

こんにちは。
わたなべ木工芸 渡辺です。
創業76年の伝統工芸の工房で木のペンを作っています。

わたなべ木工芸は、最近では、すっかり木軸ペン工房になってますが、
もともとは漆塗りで器を作ってきた工房です。

僕自身、漆塗りを15年以上はガッツリやっていました。

この漆塗りを木のペン(木軸ペン)に施すと、艶やかな光沢としっとりした手触りが加わり、オイル仕上げとは違った高級感が生まれます。

さらに、木材の保護にもなり、長く愛用するための仕上げにもなります。


この記事では、漆塗りの基本から、その魅力、そして木のペンとの相性まで、
職人目線でわかりやすく説明してみたいと思います。

漆塗りとは?


漆塗りっていうのは、「ウルシの木」からとれる樹液を精製して、
木や竹などの表面に何度も塗り重ねて仕上げる、日本の伝統的な塗装方法のことです。


日本では縄文時代から使われていて、食器や家具、仏具、楽器など、本当にいろんなものに使われてきました。

実は、日本の伝統建築や美術工芸品にも漆塗りが施されたものがたくさんあります。
たとえば正倉院の宝物やお寺の調度品なんかは、何百年も経っているのに、今でもきれいな状態なんです。
これだけ長持ちする塗装って、化学塗料ではなかなか真似できません。

漆にはこんな特徴があります。

・防水性:水を通さず、湿気にも強い
・抗菌性:雑菌の繁殖を抑えてくれる
・耐久性:傷や摩耗にも強く、長く美しさを保てる

漆塗りは、見た目の美しさだけじゃなくて、実用面でもすごく優れた塗装です。
もちろん、漆を塗れば傷がつかなくなるわけではありませんが、
木を保護しながら使えることは、毎日手に取るペンにも良いところですね。

漆塗りが木のペンにもたらす5つの魅力

木のペンに漆塗りをすると、「見た目がきれいになる」以上の魅力がたくさんあります。
ここでは、特に感じやすい5つのポイントをご紹介しますね。

<1. 深みのある光沢>

漆ならではの、しっとりとした艶が魅力です。
光の角度や明るさによって表情が変わるので、手に取るたびに違った美しさを楽しめます。


<2. 経年変化が楽しめる>

新品のときもきれいですが、時間が経つにつれて漆の透明感が増し、色が少しずつ明るくなっていきます。
変化の仕方は使い方や保管環境によっても違いますが、木目が見えやすくなっていくことも楽しみです。
時間とともに“育っていく”感じが、愛着につながります。


<3. 手触りの良さ>
表面がなめらかで、手にしっとりなじむような感触があります。
ペンは毎日手に触れるものなので、この手触りも大切なところです。触れるたびに「いいな」と思える質感を楽しんでいただけたらと思います。

Penman JPの太めの木軸では、漆を施した木肌の感触を、握る部分でも楽しめます。



<4. 木の表面を保護してくれる>

漆は木の表面を保護してくれるので、水分や汚れが染み込みにくくなります。
もちろん、落とせば傷がつくこともありますし、濡れたままにしてよいわけではありません。
それでも、日常で使う木のペンにとって、表面を保護する仕上げは良いところです。
木目の美しさを楽しみながら、長く使っていただくための役割もあります。


<5. 唯一無二の高級感>

天然素材と伝統技法の組み合わせだからこそ出せる、特別な存在感があります。
同じ欅でも、まったく同じ木目のものはありません。
その木目に漆の茶色と艶が加わることで、一本ずつ違う美しさに仕上がります。

漆塗りのPenman JPは、そこに真鍮製の日本製金具を組み合わせています。
木目と漆の艶、金具の輝きを楽しめるので、贈り物にも、自分用の少し特別な一本としてもおすすめです。

なぜ木のペンに漆塗りがぴったりなのか?


木のペンは、もともと木のぬくもりや自然な風合いが魅力です。
そこに漆塗りを施すことで、見た目や触り心地に、漆ならではの良さが加わります。

まず、質感の相性が抜群です。
木目の美しさに漆の艶が重なることで、上品さと存在感がぐっと増します。

これは、仕上げ方や、使う漆の種類によっても違いはでてきますが、
わたなべ木工芸の場合は、漆器を作っていた時代から「木の良さを活かす仕上げ」を意識するようにしています。

わたなべ木工芸のPenman JPでは、木目の良い欅の上杢に、拭き漆を施しています。
色は漆の茶色になり、高級感のある艶がでます。
木目を活かした仕上げなので、欅の良さを引き立てる漆塗りです。

そこに真鍮製の日本製金具を組み合わせることで、木と漆の美しさだけでなく、
しっかりした重みや滑らかなノック感も楽しめます。

次に、木の表面を保護してくれること。
漆塗りは、木の表面に水分や汚れが染み込みにくくしてくれます。
ペンは毎日手に触れるものなので、この保護の役割も良いところです。

そして、経年変化の楽しみも魅力のひとつ。
時間が経つにつれて漆の色味が少しずつ明るくなり、
透明感が増して、木目の表情がより楽しめるようになります。

同じペンでも使い方や環境によって変わるため、まさに“世界にひとつ”の一本になります。

だからこそ、漆塗りは木のペンと相性抜群です。
見た目の美しさだけでなく、木を保護しながら、長く使う楽しみも加えてくれる仕上げです。


漆塗り木軸ペンの制作工程(拭き漆仕上げ)

拭き漆は、漆を何度も木に染み込ませ、拭き取って仕上げる方法です。
塗膜を厚く作る一般的な漆塗りとは違い、木目や質感を活かしながら、自然な艶と保護力を与えられます。
ここでは、その流れを簡単にご紹介します。

<木地加工>

まずはペンの形に木を削ります。木目や杢(もく)の出方を見ながら、美しく仕上がるよう形を整えます。
いつものペン作りですね。


<木地固め(下塗り)>

下塗り用の生漆をたっぷり塗って染み込ませます。
木の表面を固めるための、最初の工程です。

<研磨>
漆が乾いたら、表面を滑らかにするために研磨します。
ここでの丁寧さが、最終的な艶や質感に大きく影響するので
意外と難しい


<漆を塗って、拭き取る>
生漆を塗り、すぐに専用の拭き取り紙で余分を拭き取ります。
これにより、表面に漆の薄い層ができ、自然な艶が生まれます。

<乾燥(1日〜数日)>
 
湿度と温度を管理した場所で、ゆっくり乾燥させます。
乾燥には、1日〜数日かかります。
特殊な環境でないと乾かないのが漆塗りです。

<塗りと拭きと乾燥を繰り返す>
この「塗って→拭いて→乾燥」の工程を繰り返して仕上げます。
欅の上杢を使った漆塗りのPenman JPは、4回塗り重ねています。

少ないと色や艶が物足りず、多すぎると色が濃くなり、木目が見えにくくなります。
僕が仕上がりを見て、欅の木目と漆の艶を楽しめると感じたのが、4回でした。

漆塗りは乾燥にも時間がかかるため、一本のペンを仕上げるのに数週間かかることもあります。
その分、耐久性と美しさがしっかり詰まった一本に仕上がります。

漆塗りのお手入れと注意点

漆塗りの木軸ペンは丈夫で長持ちしますが、ちょっとしたお手入れでさらに美しさをキープできます。
ここでは、ここでは、漆塗りのPenman JPを使うときのお手入れ方法と注意点をご紹介します。

<1.柔らかい布で軽く拭く>
使用後は、乾いた柔らかい布で軽く拭くだけで十分です。
手の油分や汗をやさしく取り除いてください。

”漆塗りの木軸には、基本的にオイルや蜜蝋ワックスを塗る必要はありません。”

普段のお手入れは、乾拭きで大丈夫です。
水に濡れたときは、そのままにせず、柔らかい布で水分を拭き取ってください。

< 2.強い直射日光を避ける>
長時間、直射日光に当てると、漆の色や艶が変化することがあります。
使わないときは、日差しが当たり続ける窓辺などを避け、ペンケースや引き出しに入れておくと安心です。


< 3.高温多湿の場所を避ける>
真夏の車内など、高温になる場所に置いたままにしないようにしてください。
漆で仕上げていても、中は天然木です。
熱や湿気の影響を受けることがあるので、保管する場所には少し気をつけてあげてください。


<4.硬いものと擦れないように保管する>
金属製のペンや文房具と一緒に入れていると、擦れて細かな傷がつくことがあります。
仕切りのあるペンケースや、柔らかい布の袋などを使うと、漆の表面を守りやすくなります。


<5.日常の中で使いながら楽しむ>
漆塗りのペンは、飾って眺めるだけでなく、毎日の筆記具として使っていただきたいです。
手に取ったときの感触や、光が当たったときの艶。
そして、時間とともに少しずつ変わっていく色合いも楽しんでみてください。

特別に難しいお手入れは必要ありません。
普段は柔らかい布で拭き、保管場所に少し気を配る。
そのくらいの付き合い方で、長く使っていただけたらうれしいです。



まとめ|木の美しさに、漆の艶を重ねた一本

漆塗りは、日本で古くから受け継がれてきた、木を美しく丈夫に仕上げる技法です。

木のペンに漆を塗ることで、木目の美しさに高級感のある艶が加わります。
見た目だけでなく、木の表面を保護してくれるのも良いところです。

僕は、もともと漆塗りの器を作っていたので、ペンにもその経験を活かせるのはうれしいです。
木を削る仕事と、漆で仕上げる仕事。
その両方を、毎日使うペンで感じてもらえたらと思っています。

木目が好きな方や、艶のある木軸ペンを使ってみたい方に、ぜひ手に取っていただきたいです。

日々使いながら、少しずつ変わっていく漆の色や、木目の表情も楽しんでみてください。