2025/11/04 11:22






アフリカでは「神が宿る木」と呼ばれるブビンガ。
その名の通り、ひと目でわかるような圧倒的な存在感を持っています。
深みのある赤茶色と、美しい光沢。


まるで、“宝石”のような質感があります。
木軸ペンとして手に取ると、その重厚さと滑らかさに驚くはず。

使うほどに艶を増し、深く落ち着いた色へと育っていく——
まさに“時とともに輝きを増す木”といえるでしょう。

今回の記事では、そのブビンガについて解説していきます。


【産地】

ブビンガは、アフリカ中西部の熱帯雨林に生育する広葉樹です。

主な産地は、ガボン・カメルーン・コンゴといった赤道付近の地域。

高温多湿な気候の中でゆっくりと時間をかけて育ち、
その密度の高い木質と美しい光沢が生まれます。
大自然の恵みをたっぷりと受けたその姿は、
まさに「生命力そのもの」。
力強く、どこか神秘的な印象を与える木です。

【歴史・文化】

ブビンガは、古くからアフリカの人々にとって“神聖な木”とされてきました。

儀式の道具や装飾品、神殿の柱などに使われ、「神が宿る木」として崇められていたそうです。
その後、ヨーロッパへも渡り、高級家具や楽器の素材として愛されるようになりました。

特にギターやドラムなど、音を響かせる楽器には欠かせない存在です。
そして日本でも、その優れた音響特性を活かし、和太鼓の胴に使われることがありました。

硬くて響きが良く、美しさと力強さを併せ持つ——
ブビンガは、まさに世界を超えて愛されてきた“音を奏でる木”です。

【特徴・性質】

ブビンガは、とても硬くて重い木です。

加工の際には刃物が負けるほどの強さを持っていますが、
仕上げると、まるで鏡のような美しい光沢を放ちます。
木肌は緻密で、手触りはしっとりとなめらか。
木軸ペンとして仕立てると、手の中で“安定感”を感じられます。
長く使っても傷がつきにくい、耐久性にも優れた素材です。
その重厚さの中に、どこか上品なぬくもりがある。

ブビンガは、まさに「強さ」と「美しさ」を兼ね備えた木です。

【木目】

ブビンガの木目は、ゆるやかに流れるような模様が特徴です。
まっすぐすぎず、ほどよく動きのあるラインが入り、落ち着いた表情の中に自然なリズムがあります。

色は赤褐色を基調とし、部分的に濃く見える帯が入ることで、深みのある印象になります。
派手さよりも、しっとりとした高級感が感じられる木目です。

【色】

ブビンガの色は、赤みの強い褐色が基調です。
木を削り出した直後はやや明るい赤色に近く、時間が経つにつれて落ち着いた赤褐色へと変化していきます。
光沢があるため、表面は自然な艶を帯び、しっとりとした深みが増していきます。

派手すぎず、それでいて存在感のある色合い。
長く使うほどに、赤みがやわらぎ、落ち着いた茶色へと育っていくのが特徴です。

【匂い】

ブビンガは、削っているときに樹脂のような強い香りが立ち上がります。
少しツンとする刺激のある匂いで、木の油分が熱で反応したような独特の香りです。
削り始めると工房全体にその香りが広がり、「あ、ブビンガを削ってるな」とすぐにわかるほど。

仕上げの段階では香りは落ち着きますが、
加工中の印象はとても強く、職人にとっては記憶に残る木のひとつです。

【硬さ】

ブビンガは非常に硬く、木工の中でも「重硬材(じゅうこうざい)」に分類されます。
加工のときは刃物の切れ味がすぐに落ちるほどで、慎重な作業が求められます。
その分、仕上がったときの表面はとても滑らかで、密度の高さを感じます。

木軸ペンに仕立てると、ずっしりとした重量感と安定感が特徴です。
手に取ったときに感じる“重み”が、書く動作を落ち着かせてくれるような感覚があります。

【用途】

ブビンガは、その硬さと美しさから、世界中で高級素材として使われてきました。
家具材としてはテーブル天板やキャビネットなど、重厚感を求める製品に多く使われ、
楽器ではギターやドラムのボディ、さらには日本では和太鼓の胴にも用いられています。

その音の響きや仕上がりの美しさから、プロの職人たちにも長く愛されてきた木です。
わたなべ木工芸でも、この特有の密度と艶を活かし、落ち着きのある木軸ペンに仕立てています。

【希少性】

ブビンガは、もともと大木に育つ木ですが、近年は伐採制限が進み、良質な材の入手が難しくなっています。
特に大径木(だいけいぼく)は数が減り、幅広い木目を確保できる材はとても貴重です。

また、産地によって色味や質感が微妙に異なり、同じブビンガでも表情がまったく違います。
木軸ペンに使えるような木取りの美しい部分はごくわずかで、
まさに“一期一会”の出会いといえる素材です。

【経年変化】

ブビンガは、使い込むほどに赤みが落ち着き、深みのある赤褐色へと変化します。
はじめは明るめの赤色ですが、時間が経つにつれて色がやや暗くなり、しっとりとした艶が増していきます。

木の内部に含まれる油分が表面に馴染むことで、自然な光沢が生まれます。
長く使うほどに手になじみ、まるで「育てていくような」楽しさを感じられる素材です。

【まとめ】

ブビンガは、重厚感と上品さをあわせ持つ特別な木です。
硬くて丈夫、そして深い赤褐色の美しさが魅力。
派手さではなく、“確かな存在感”で使う人の手元を引き立ててくれます。

長く使うほどに艶が増し、色も落ち着いていくので、
まさに「時間とともに育つ木軸ペン」にぴったりの素材です。

当工房で制作しているブビンガの木軸ペンも、
その重みと深い色合いを活かした一本に仕上がっています。
ぜひ手に取って、ブビンガならではの“静かな高級感”を感じてみてください。

わたなべ木工芸では、国産の木を中心に一本ずつ丁寧に仕上げた木軸ペンをご用意しています。

気になる方は、ぜひこちらからご覧ください。