2026/09/05 14:41

同じ樹種から作った木軸ペンでも、色や木目がまったく同じになることはありません。
なぜなら、木が育った環境や、一本の木の中で使う場所、材料を切り出す方向などによって、
色や木目の見え方が変わるからです。
たとえば、同じ欅の木軸ペンを何本か並べてみると、明るいものもあれば濃いものもあり、木目がまっすぐなものや、複雑に動いて見えるものもあります。
僕自身、材料の状態からある程度は完成後の木目を想像していますが、実際に削ってみると思っていた以上に美しい模様が現れることもあります。
この一本ずつ異なる表情が、天然木を使った木軸ペンの面白さでもあります。
こんにちは。
わたなべ木工芸の渡辺です。
創業76年の伝統工芸の工房で、木軸ペンを作っています。
この記事では、同じ樹種でも木軸ペンの色や木目が違う理由を、
実際に木材を扱っている職人の立場から分かりやすく解説します。
同じ樹種でも色や木目が違う理由
同じ樹種の木軸ペンでも、色や木目が一本ずつ違うのは、木が天然の素材だからです。
木は同じ種類であっても、すべてが同じ環境で育つわけではありません。
日当たりや気温、雨の量、土の状態など、それぞれ異なる環境の中で何十年もかけて成長します。そのため、同じ欅や山桜でも、色の濃さや木目の細かさに違いが生まれます。
さらに、一本の木の中でも、中心に近い部分と外側では色が異なります。根元に近い部分や枝分かれした部分では、木目が複雑になることもあります。
材料をどの場所から取り、どの方向に切り出すかによっても、完成した木軸ペンの表情は変わります。
つまり、木軸ペンの色や木目は、主に次のような要素によって決まります。
・木が育った環境
・一本の木の中で材料を取った場所
・木が成長する過程で受けた力
・材料を切り出す方向
・表面の仕上げ方
同じ樹種であれば、色や木目にある程度共通した特徴はあります。
しかし、まったく同じ色や木目の木軸ペンを作ることはできません。
この一本ごとの違いこそが、天然木を使った木軸ペンの大きな魅力です。
木が育った環境によって違いが生まれる

木は、何十年という長い時間をかけて成長します。
その間に受ける日光や雨、気温、土の状態は、一本ずつ異なります。
同じ樹種であっても、育った場所が違えば、成長する速さや年輪の幅にも違いが生まれます。
日本国内でも、日本海側と太平洋側では、冬の気候が大きく異なります。
特に日本海側の雪が多い地域では、木は寒さや積雪に耐えながら成長します。
雪の重みや風の影響を受けることもあり、木にとっては決して穏やかな環境とはいえません。
一般的には、このような厳しい環境でゆっくりと育った木ほど、
年輪が詰まり、細かな木目が現れることがあります。
年輪が詰まり、細かな木目が現れることがあります。
また、成長する過程で複雑な力が加わることで、美しい杢が現れることもあります。
もちろん、雪国で育った木に必ず美しい杢が出るわけではありません。
それでも、私たちの工房では昔から(木のお盆などを作っていた昭和の時代から)、
木目が細かく、質の良い材料を求めて、雪が降る地域で育った木を選んで使うことが多くありました。
実際に同じ樹種の材料を何本も削っていると、木目が細かく詰まったものもあれば、木目の間隔が広く、
あらく見えるものもあります。
色についても、明るいものから濃いものまでさまざまです。
木目は、その木が長い年月をかけて育ってきた記録ともいえます。
同じ樹種であっても一本ずつ表情が違うのは、それぞれの木が異なる土地で、異なる気候に耐えながら成長してきたからです。
同じ一本の木でも、場所によって色や木目が違う

色や木目の違いは、別々の木だけに生まれるものではありません。
同じ一本の木から取れた材料でも、使う場所によって色や木目は変わります。
木の中心に近い部分は「心材」、外側に近い部分は「辺材」と呼ばれます。
一般的には、心材は色が濃く、辺材は白っぽく明るい色をしていることが多いです。
(上の画像はブビンガの心材と辺材の境目です)
(上の画像はブビンガの心材と辺材の境目です)
そのため、一本の材料の中に心材と辺材の両方が入っていると、
濃い色と明るい色が混ざった木軸ペンになることもあります。
また、根元に近い部分、幹のまっすぐな部分、枝分かれしている部分でも、
木目の表情は異なります。
幹のまっすぐな部分は、比較的素直で整った木目が出やすくなります。
一方、根元や枝分かれした部分では、木の繊維が曲がったり複雑に入り組んだりするため、動きのある木目や美しい杢(もく)と呼ばれる美しい模様が現れることがあります。
ただし、複雑な木目がある場所は、削りにくかったり、割れやすかったりすることもあります。
見た目が美しい場所を選ぶだけでなく、木軸ペンとして安心して使える強度があるかを確認することも、材料選びでは大切です。
同じ一本の木から作った木軸ペンでも、どの場所を使ったかによって、まったく違う表情になります。
木を削って初めて分かる表情もある

木材の状態を見れば、完成後の色や木目をある程度は想像できます。
しかし、実際に削ってみないと分からないこともたくさんあります。
木材の表面は、長く保管している間に日焼けしたり、汚れが付いたりしているため、
中の色や木目が見えにくくなっています。
そこから表面を少しずつ削っていくと、隠れていた木本来の色や木目が現れてきます。
材料の状態では普通に見えていた木から、想像以上に美しい木目が出てくることもあります。反対に、きれいな模様が出そうだと思っていた材料でも、削ってみると期待していたほど目立たないこともあります。
僕にとって、木を削って木目が少しずつ見えてくる瞬間は、木軸ペン作りの中でも特に面白いところです。
同じ樹種を何度も削っていても、毎回まったく同じ結果にはなりません。
どのような色や木目が出てくるのか、最後まで分からない。
この予想できない部分も、天然木を使ったものづくりの魅力だと思います。
(上の画像 きはだの縮み杢の材料 下の画像 完成した木軸ペン)
(上の画像 きはだの縮み杢の材料 下の画像 完成した木軸ペン)

仕上げることで色や木目がはっきり見えてくる
木軸ペンは、形を作って削り終えた段階と、最後の仕上げをした後では、
色や木目の見え方が大きく変わります。
削った直後の木は、表面が白っぽく乾いたように見えることがあります。
木目も少しぼんやりしていて、この段階では完成後の表情がまだ分かりにくい状態です。
そこから表面をきれいに磨き、オイルや蜜蝋ワックスで仕上げると、木の色に深みが出て、
木目もはっきりと見えるようになります。
特に杢がある材料は、仕上げる前と後で印象が大きく変わります。
仕上げることで表面にツヤが出ると、光の当たる角度によって木目が輝いたり、動いているように見えたりします。
僕も木軸ペンを作るときは、最後にオイルを塗る瞬間を楽しみにしています。
削っている途中では目立たなかった色や木目が、オイルを塗った瞬間にはっきりと浮かび上がることがあるからです。
木軸ペンの製作動画でも、削り終わった木にオイルを塗る場面をよく入れています。
それは、単に仕上げの工程を紹介したいからではありません。木の色や木目が一気に現れる瞬間の感動を、動画を見ている方にも伝えたいと思っているからです。
また、同じ樹種でも、仕上げたときに濃く変化するものもあれば、明るい色を残すものもあります。
木が持っている本来の色や木目は、最後まで仕上げて初めて分かることも多いです。
木軸ペンの木目は選べるのか
わたなべ木工芸では、基本的に木軸ペンの木目を一本ずつ選んでいただく販売方法にはしていません。
同じ樹種でも色や木目に個体差があるため、商品ページに掲載している写真と、まったく同じ表情の木軸ペンが届くとは限りません。
「どのような木目のペンが届くのだろう」と、不安に感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、木を削った結果、木目が良くなかったものは商品にしていませんので、安心してください。
完成した木軸ペンは一本ずつ確認し、木目の良いものを選んで、良いものから順番にお届けしています。
ただし、木目の良さには一つの正解があるわけではありません。
まっすぐに整った木目を美しいと感じる方もいれば、大きく動いた複雑な木目を好まれる方もいます。色についても、明るいものと濃いものでは、それぞれ違った魅力があります。
天然木の木軸ペンは、工業製品のようにすべてを同じ見た目にそろえることができません。
だからこそ、届いた一本との出会いも楽しんでいただけたらと思っています。
同じ樹種の中でも少しずつ異なる色や木目は、その木軸ペンだけが持っている個性です。
個体差は天然木ならではの魅力

木軸ペンの個体差は、品質のばらつきではなく、天然木だからこそ生まれる魅力です。
同じ樹種、同じ形の木軸ペンであっても、色の濃さや木目の流れは一本ずつ異なります。
まっすぐ伸びた木目、細かく詰まった木目、大きく動きのある木目。
それぞれに違った良さがあり、まったく同じ表情の一本を作ることはできません。
さらに、木軸ペンは使い続けることで、少しずつ色やツヤが変化していきます。
同じ時期に作ったペンでも、使う頻度や環境によって、変化の仕方は同じではありません。
届いたときから一本ずつ違い、使い始めてからも、その人だけの表情へと変わっていきます。
見た目が均一ではないことを短所と考えるのではなく、「自分と同じ木目のペンを持っている人はいない」と考えると、天然木の面白さをより感じていただけると思います。
一本ごとの違いを見比べたり、時間とともに変化していく様子を楽しんだりできることが、木軸ペンならではの魅力です。
よくある質問
<同じ樹種なら、色はだいたい同じですか?>
樹種ごとに基本となる色の傾向はあります。
たとえば、山桜は明るくやさしい色、ブビンガは赤みのある色、黒檀は濃く落ち着いた色が特徴です。
ただし、同じ樹種でも材料によって色の濃さには違いがあります。
<商品写真と同じ木目のペンが届きますか?>
天然木を使用しているため、商品写真とまったく同じ木目にはなりません。
わたなべ木工芸では、完成後に一本ずつ木目を確認し、木目の良いものを商品として販売しています。
商品写真は、その樹種が持つ色や木目の参考としてご覧ください。
<木目が良いペンは、どのように判断していますか?>
木目の細かさや流れ、全体のバランスなどを見て判断しています。
まっすぐ整った木目だけでなく、複雑な動きやツヤが見られる木目も魅力的です。
最後は、職人として「この木目なら安心してお届けできる」と思えるものを選んでいます。
<使っているうちに木目も変化しますか?>
木目の模様そのものが変わるわけではありません。
ただし、使い続けることで木の”色”が深くなり、表面にツヤが出てきます。その結果、最初よりも木目がはっきり見えるようになることがあります。
木目を楽しみながら、色やツヤの経年変化も一緒に味わっていただけます。
まとめ|同じ樹種でも、同じ木目の木軸ペンはありません
同じ樹種の木軸ペンでも、色や木目が一本ずつ違うのは、木が天然の素材だからです。
木が育った環境や、一本の木の中で材料を取った場所によって、色の濃さや木目の細かさは変わります。
また、材料の状態では分からなかった美しい木目が、削ったりオイルで仕上げたりすることで、初めて現れることもあります。
同じ樹種であれば、基本となる色や木目の特徴は共通しています。
しかし、まったく同じ表情の木軸ペンはありません。
わたなべ木工芸では、完成後に一本ずつ確認し、木目の良いものを商品として販売しています。
どのような木目の一本が届くのか、その出会いも天然木の木軸ペンならではの楽しみとして、味わっていただけたら嬉しいです。
木の種類による色や木目の違いを詳しく知りたい方は、樹種一覧の記事もあわせてご覧ください。
わたなべ木工芸では、さまざまな天然木を使った木軸シャーペン・ボールペンを販売しています。
ぜひ、自分の好みに合った樹種を探してみてください。
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