2025/12/09 18:10

黒檀(こくたん)といえば、深い黒色が印象的な、静かで重厚な木。
その黒檀の中には、黒と茶色が重なり合い、自然が描いた色の流れが美しい「縞黒檀(しまこくたん)」という種類があります。
縞黒檀は、黒檀らしい落ち着いた雰囲気の中に、やわらかなコントラストが生まれるのが特徴です。

光が当たると縞模様がふわっと浮かび上がります。
木軸ペンにすると、黒檀ならではの重みと安定感に加えて、ほどよい縞模様が、日常づかいに心地さを感じさせてくれます。
そのため、わたなべ木工芸の黒檀の木軸ペンでは、この「縞黒檀」を採用しています。
ここでは、そんな縞黒檀の魅力を、3分で読めるようまとめました。


【産地】

縞黒檀(しまこくたん)は、主に東南アジアのあたたかな地域で育つ木です。
インドやスリランカ、インドネシアなど、湿度が高くゆっくりと育つ環境を好みます。
黒檀は成長がとても遅く、太い木になるまでに長い年月が必要です。
そのゆっくりとした時間の中で、黒と茶色の縞模様が自然に作られていきます。

【歴史・文化】

縞黒檀(しまこくたん)は、古くから「唐木(からき)」として親しまれてきました。
唐木とは、主に東南アジアから日本に伝わった堅くて美しい木の総称で、仏具・家具・装飾品などの高級品に用いられてきた歴史があります。
その中でも、『黒檀(こくたん)・紫檀(したん)・鉄刀木(たがやさん)』は
「唐木三大銘木(からき さんだい めいぼく)」と呼ばれ、とくに貴重で価値のある木として扱われてきました。
縞黒檀は、この三大銘木のひとつである黒檀の仲間で、
黒檀の持つ重厚な雰囲気に、明るい縞(しま)の流れが加わった、とても美しい材です。
古くから黒檀は、仏壇や三味線の糸巻き、茶道具など、
「長く大切に使う道具」に選ばれてきました。

その硬さと落ち着きは、品格を大切にする日本の文化にぴったりだったんだと思います。
縞黒檀は黒檀の中でも表情が豊かで、一本ごとに違う模様が現れます。
そのため、昔は“持つ人との出会いを楽しむ木”とも言われ、
選ぶ人の美意識を映すような不思議な魅力があるとされています。

【特徴・性質】

縞黒檀(しまこくたん)は、非常に硬くて密度の高い木です。
持ってみると「木なのに、こんなに重いんだ」と驚くほどで、この重みこそ黒檀ならではの魅力でもあります。
表面はとてもなめらかで、触れるとツルッとした感触があります。
また、硬さがある分、細かな部分まで美しく仕上がり、
磨けば磨くほど自然な艶(つや)が出てくるのも特徴です。
縞黒檀は黒檀の中でも模様が豊かで、黒と茶のコントラストが静かに動いて見えることがあります。
重厚感の中にやわらかな表情が宿るのが、この木の大きな魅力です。

【木目】

縞黒檀(しまこくたん)の木目は、黒をベースに、明るい茶色のラインがすっと流れるのが特徴です。
この縞模様は自然にできたもので、一本一本まったく違った表情を見せてくれます。
縞がまっすぐ力強く入るものもあれば、
ゆらぎながら優しく動くようなラインになるものもあり、
同じ「縞黒檀」という名前でも、まるで別の木のように個性が出ます。
光に当たると縞がふわっと浮かび上がり、
黒檀らしい重厚さの中にやわらかな味わいが生まれます。
木軸ペンとして手に取ったとき、このコントラストがとても美しく感じられます。
杢(もく)が強く出る種類ではありませんが、
縞の揺らぎがまるで絵画のような表情をつくり、
一本だけの“景色”を楽しめる木です。

【色】

縞黒檀(しまこくたん)の色は、深い黒をベースに、明るい茶色の縞(しま)が
自然に混ざり合った落ち着いた色合いです。

黒檀ならではの重厚さはそのままに、縞が入ることでやわらかさや温かみが加わります。
光の当たり方によって見え方が変わり、
強い光では縞がくっきりと浮かび、
やわらかな光では黒色の中にそっと溶け込むように見えます。
使い続けるうちに色味はゆっくりと深まり、
表面にしっとりとした艶(つや)が育っていきます。
黒はさらに落ち着いた黒へ、茶色の縞は濃い飴色のように変化し、
「自分だけの一本」に育っていくのを感じられます。

【匂い】

縞黒檀(しまこくたん)は、強い香りを持たない木です。

鼻を近づけると、ほんのり木らしい落ち着いた匂いがする程度で、
日常使いの木軸ペンとしてもとても扱いやすい素材です。
香りにクセがないため、
書くときに気が散ったり、手元で香りが主張したりすることもありません。


【硬さ】

縞黒檀(しまこくたん)は、世界の木の中でもトップクラスの硬さを持つ木です。
硬い木は加工が難しい反面、仕上がりはとても美しく、
表面を丁寧に磨くことでガラスのようになめらかな質感が生まれます。
書き心地にも影響し、軽い力でも筆先がふらつきにくく、落ち着いて書けるのが魅力です。

【用途】

縞黒檀(しまこくたん)は、その硬さと耐久性、美しい縞模様から、昔からさまざまな“長く使う道具”に選ばれてきました。
仏壇や仏具、三味線の糸巻き、高級家具の装飾部分など、
「丈夫で見た目も美しいこと」が求められる場面でよく使われてきた木です。
特に黒檀は、唐木(からき)の中でも品格が高い素材として扱われ、
格式のある伝統工芸に欠かせない存在でした。


【希少性】

縞黒檀(しまこくたん)は、黒檀の中でもとくに入手が難しい素材のひとつです。
黒檀そのものがとても成長の遅い木で、太く立派な材になるまでには長い年月が必要です。
そのうえ、縞模様が美しく出る材はさらに少なく、自然が生んだほんのわずかな“偶然”に頼る部分もあります。
また、近年は輸出規制や森林資源の減少などもあり、
良質な黒檀材を安定して手に入れることがますます難しくなっています。
そのため、縞黒檀は市場に出回る量も限られており、
同じ表情のものをもう一度手に入れることはほとんどありません。
「この模様に出会えたこと自体が特別」
そんな一期一会の魅力を持つ木です。

【経年変化】

縞黒檀(しまこくたん)は、使い続けるほどに表情が深まり、ゆっくりと育つように変化していく木です。
黒い部分はより落ち着いた黒へ、
茶色の縞は飴色に近い濃い色へと変わり、
最初に手にしたときよりもしっとりと落ち着いた雰囲気が生まれます。
表面も使うほどになめらかになり、手の油分や触れる時間によって自然な艶(つや)が育っていきます。
樹脂を塗ったような“均一な光沢”ではなく、
使う人の暮らしや時間が少しずつ重なった“やさしい艶”が生まれるのが特徴です。
最初の印象とはまた違った美しさが現れてくるため、
「同じペンなのに、どんどん好きになっていく」
そんな喜びを感じさせてくれる素材です。
一本のペンと長く付き合いたい方には、とてもおすすめの木です。


【まとめ】

縞黒檀(しまこくたん)は、黒檀ならではの落ち着いた雰囲気の中に、
自然が描いた縞模様がすっと流れる、とても表情豊かな木です。
重みのある安心した書き心地と、使うほどに深まる艶(つや)。
一本のペンと長く付き合う楽しさを、静かに教えてくれる素材です。
黒と茶色のコントラストは一本ごとにまったく違い、
「これだ」と感じる模様に出会えたら、それはまさに一期一会。
縞黒檀の木軸ペンは、日々の机の上で、落ち着きと小さな喜びを添えてくれます。
わたなべ木工芸でも、この縞黒檀を使った木軸ペンを制作しています。
もしご縁がありましたら、手に取って、その静かな美しさを感じていただけたらうれしいです。


わたなべ木工芸では、国産の木を中心に一本ずつ丁寧に仕上げた木軸ペンをご用意しています。