2025/08/13 15:13
「木のペンを使ってみたいけど、手汗が多いのでやめた方がいいですか?」
とご質問をいただきました。
木のペンだと手汗でシミや汚れがついてしまう事が心配になる方も多いのではないでしょうか。
こんにちは!
わたなべ木工芸 渡辺です。
創業75年の伝統工芸の工房で木のペン(木軸ペン)を作っています。
実際、手汗の多い方が、長い期間、木軸ペンを使うとどうなるのかと言うと、
手汗に含まれる油分や水分が木軸部分に染み込み、色や艶が出る事があります。
これは、定期的なメンテナンスである程度は防げます。
でも、どうしても気になる方、不安な方に向けて
今回は、手汗によるシミや汚れがつきにくい木軸ペンの選び方と、
実際に職人が「これなら安心」とおすすめできる樹種4選をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
手汗が木軸ペンに与える影響
木軸ペンは、使えば使うほど手になじみ、色や艶が変化していく「経年変化(けいねんへんか)」
が魅力のひとつです。
ただし、手汗が多い方の場合、その変化が思わぬ形で現れることがあります。
手汗には水分だけでなく、塩分や皮脂も含まれています。
これらが木の表面にじわっと染み込むことで、色ムラやシミができてくる場合があります。
特に、白っぽい木や柔らかい木は影響を受けやすく、変化が目立ってしまうことがあります。
もちろん、それを「味」として楽しむ方もいますが、
「できるだけ長くきれいな状態を保ちたい」という場合は、木の種類や仕上げをしっかり選ぶことが大切です。
シミや汚れに強い樹種の特徴
先ほど、「白っぽい木や柔らかい木は影響を受けやすい」と言いました。
なので、その逆の特徴がある木って言うのが、手汗によるシミや汚れに
強い木になります。
つまり、 「色が濃い」 、なおかつ 「硬くて緻密」 ということ。
まず、色が濃い木は、多少の変化が起きても目立ちにくいという利点があります。
黒や濃い茶色の木は、表面の色ムラや汚れが背景に溶け込みやすく、見た目の美しさを長く保てます。
そして、硬くて緻密な木は繊維の隙間が少なく、水分や皮脂が内部に染み込みにくい性質があります。
これにより、表面に手汗が触れても変色が起こりにくくなります。
この「濃い色」「硬い」の条件を満たす木を選ぶことで、
手汗によるシミや汚れのリスクを大幅に減らすことができます。
手汗に強いおすすめ樹種4選
1. 紫檀(シタン)
家具や楽器など、高級品に使われてきた銘木。
とても硬くて緻密なため、手汗の水分が染み込みにくく、色ムラが出にくいのが特徴です。
深みのある赤紫系の色味は高級感があり、長く使うほど艶が増していきます。
2. 黒檀(コクタン)
唐木の中でも最も硬い木で、水分や油分の浸透をほとんど許しません。
当工房で扱ってる黒檀は「縞黒檀(しまこくたん)」で色は黒から茶色のコントラスト。
汚れやシミがまったく目立たないレベル。
重量感があり、しっかりとした書き心地を楽しめます。
3. ウォールナット
世界三大銘木のひとつ。紫檀や黒檀ほど硬くはありませんが、比較的緻密で、色は落ち着いた濃い茶色。
硬い木特有の滑りやすさもありません。
4. ブビンガ
アフリカ原産の硬くて重い木。
赤褐色〜紫がかった濃い色味を持ち、耐久性と耐水性に優れています。
木目が緻密で滑らかなため、手汗によるシミや色ムラがほとんど目立たず、華やかな印象の木軸になります。
こうしてみると、外国の木の方が、シミや汚れに目立たない木が多いですね。
日本の木で選びたい場合は、黒柿の「黒の部分の多いもの」か「神代けやき」をお選びいただくのがおすすめです。
手汗によるシミを目立たせないためのお手入れ
せっかく手汗に強い木軸ペンを選んでも、日々のお手入れを怠ると少しずつシミや色ムラが目立ってしまいます。
ここでは、手汗による影響を最小限に抑えるための簡単なケア方法をご紹介します。
使ったあとは乾拭きする
→ 柔らかい布やメガネ拭きで、表面の水分・皮脂をやさしく拭き取ります。
これだけで汚れの定着を大きく防げます。
直射日光や高温多湿を避けて保管する
→ 高温や湿気は木を膨張させ、変色やシミの原因になります。
ペンケースや引き出しに入れて保管すると安心です。
オイル仕上げのペンは定期的に再塗布
→ 亜麻仁油や木工用オイルを薄く塗り込むことで、
木の表面に保護膜ができ、水分が染み込みにくくなります。(※塗装仕上げのペンには不要)
日常のちょっとしたケアで、見た目の美しさは何年も保つことができます。
まとめ
手汗によるシミや汚れを防ぐには、まず木の選び方が大切です。
「硬くて緻密」かつ「色が濃い」 樹種を選べば、
水分や皮脂の浸透を抑え、変色や色ムラを目立ちにくくできます。
今回ご紹介した 紫檀・黒檀・ウォールナット・ブビンガ は、どれも手汗耐性に優れた木材です。
さらに、日常的な乾拭きや適切な保管といった簡単なお手入れを続けることで、
美しさを何年も保つことができます。
お気に入りの木軸ペンを、手汗を気にせず長く愛用できるよう、ぜひ樹種選びとお手入れの両方を意識してみてください。
では、またー!